制作に向かうときに意識している三つのこと
ひとつは、ガラスという素材に対すること。
ガラスは常温ではひんやりと冷たく石のように硬く、
熱を加えると柔らかくかたちを変化させる素材。
それらのあたりまえの性質を、私なりにシンプルに捉えたい。
もうひとつは、かたちについてのこと。
かたちは輪郭。その輪郭の内側にガラスが満ちている。
透明で、やわらかな光を内包したガラスは確かにそこに「ある」のに、
まるで「ない」ような、空っぽの空間のように見えることがある。
輪郭の内と外を、意識は常に行き来する。
かたちは、あるその場所で、空気と光の満ちる空間の中で、
それぞれのイメージをそのまま受容するものであってほしい。
何か特定の具体的なものではなく、
ただそこにあるものとしてのかたちを作りたい。
最後のひとつは、自分とガラスとのこと。
わたしが取り組むキルンワークという技法は、
ひとつひとつの工程を淡々とこなしてかたちを作っていく技法。
自分と素材と一体になって、というようなロマンチックな感覚はなく、
どちらかというと少し離れたところから眺めているような感覚でいる。
その距離感が適度でちょうど良く、ガラスはわたしにとって他者である。
わたしとガラスの対話から、ぽつり、とかたちが出てくる。
(2015.04.10)